学校だより__

気持ちの上手な伝え方

令和元年度 第8号(令和元年12月11日発行)



◆対人関係における3つのタイプ
 少し乱暴かもしれませんが、人との接し方に着目すると、人間はおよそ次のタイプに分けることができるように思います。1つ目は歯に衣(きぬ)着せず自分の気持ちをストレートに伝えるAタイプ、2つ目は言いたいことはあるのですが、我慢して相手に伝えないBタイプ、3つ目は穏やかに自分の気持ちを伝えるCタイプです。
 事例を挙げて説明した方が、分かりやすいかもしれません。友達に本を貸したのですが、友達はいつまで経っても返してくれません。こんな場合、Aタイプの人は「あの本、いつになったら返してくれるの。」と友達に伝えます。友達は、長々本を借りていた自分の非を認めつつも、相手の口調の強さにカチンときます。Bタイプの人は、友達に「本を返してほしい。」と伝えることができません。その分、自分の中にストレスを抱え込んでしまいます。不満のはけ口として、陰でその友達の悪口を言うこともあるでしょう。Cタイプの人は、「以前に貸した本なんだけど、もう読み終わった?私も読み直したいので、そろそろ返してもらえる?」と伝えます。相手を非難した言い方ではないので、その後の人間関係に支障を来(きた)すこともありません。対人関係を良好に保つことができるのは、もちろんCタイプの人です。

 ◆心理療法から生まれたアサーションという考え方
 現代社会では、対人関係で悩む人が少なくありません。1950年代にアメリカで、心理療法の一つとして「相手を傷つけずに自分の気持ちを伝える」=アサーション(意訳:「さわやかな自己主張」)という考え方が生まれました。上述したCタイプの人たちは、知らず知らずのうちに、このアサーションの考え方を実行しているのです。現在では日本でも、アサーション・トレーニングを社員教育の一環として取り入れている企業が少なくありません。
 アサーションの根底にあるのは、「I am OK,You are OK.」という考え方です。日本流にいえば「お互い様」という表現が一番ぴったりくるような気がします。ちなみに、先程のAタイプは「I am OK,You are not OK.」、Bタイプは「I am not OK,You are OK.」の関係になります。

 ◆人権教育につながるアサーション
 Aタイプのように、感情的・攻撃的になって後味の悪い思いをしたりしない、またBタイプのように、不本意に自分を押し殺して後悔したりしないために、Cタイプのように、相手も自分も大切にする対人関係を築くための自己表現をぜひ身に付けたいものです。このように考えると、アサーション・スキルを身に付けることは、人権教育の実践化にもつながるように思います。機会をとらえて、子どもたちにも伝えたいと考えています。